先輩の卒業式。
あたしは涙をこらえて下を向き式に出ていた。
卒業証書授与で1人1人名前が呼ばれていく…
先輩の名前が呼ばれて初めてあたしは顔をあげ、先輩を見ていた。
先輩は堂々と壇上に登りクルッと振り返って前を見た。
その時だけあたしは初めて先輩から目をそらさなかった。
いつも恥ずかしくて目をそらしていたのにその時だけは先輩をみんなと同じ立場で見つめる事ができたんだ。
卒業式が終わると、後輩たちが先輩たちに群がった。ボタンやネームプレートをもらう為にみんな必死だった。
あたしにはその中から先輩をみつける事が簡単だった。
でもまた結局、先輩の所に行く勇気がなかったんだ。それで人混みを掻き分けてあたしは1人家に帰った。先輩のジャージが欲しかった。
一緒に写真が撮りたかった。
ありがとうって言いたかった。
人混みを抜けたあたしは泣きながら1年間先輩の背中を見ながら帰った帰り道をゆっくりゆっくり歩いていた。
最後まで先輩に何も言えなかった自分。
カッコ悪い自分。
その全てがこの道にある気がした。
先輩を困らせたくなくてなんて言い訳で…
傷つくのが怖かった。
それで逃げ出した。
あたし、カッコ悪いな… 先輩の卒業式は終わってしまった。
もう先輩には会えないんだな…
そう思ったら悲しすぎて笑えた。
情けなくて笑えた。