金獅子の咆哮 1

戒音  2009-05-28投稿
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男は鎖で拘束されていた。
まばゆいばかり金髪に紅い瞳。
顔は端麗だか、身体は鍛え上げられ、まるで伝説の闘神、オルガディートそのものだった。
その閉鎖空間の中で、彼は咆哮を上げた。
その咆哮で時限が歪むと、彼は歪みの中にその身を投じた。


巫女の菖蒲(あやめ)は、境内の掃除をやめて空を見上げた。
黒雲が渦を巻き、不吉な風が吹き込んでくる。
「来るッ!」
菖蒲は空から落下してくる金色の何かが、境内の敷地内に落ちるなり駆け出した。
現場には衝撃でえぐり取られた大地と、その中心には、全身に傷を負った、金色の獅子が横たわっていた。

丁寧に傷口を消毒して包帯を巻いていた菖蒲は、金獅子が目を覚ましている事に気付いた。
真紅の瞳には闘争心は感じられない。
「綺麗ね貴方」
縦髪を撫で付けると、心地良さそうに金獅子は目を細める。
「俺よりもお前の方が美しい」
金獅子が言葉を話しても、菖蒲は動揺しない。
「娘、男物の服はあるか」
「兄のがあります」
言うなり襖を開けて、隣の部屋で服を探している間に、見る間に金獅子は美貌の青年へと変じた。
戻った菖蒲は、全裸の青年の姿に顔を覆い隠す。
仕方なく立ち上がった青年は、菖蒲が落とした服をさっさと身につけて、長い髪を払った。
「もうよいぞ、娘」
言われて顔を上げた菖蒲は、あまりにも美形な彼の姿に見惚れてしまった。
「我が名はオルガディート。お前の名前は?」
「あ、菖蒲と申します」
その瞬間、オルガディートは菖蒲の手を引き寄せるなり、その唇を奪った。
そして不適な笑みを浮かべた。
「我れが同胞よ、聞くがいい。我は菖蒲なる者と契約した」
見えない呪縛の鎖が外れていく度に、力が湯水のようになだれ込んで来る。
そして戸惑う菖蒲を突然押し倒した。
「ちょっと、何して・・」
「血の契約だ。我と汝が契りを交わすのだ」
菖蒲が蒼白するのも無理は無かった。
「本体のままがよければそうするが、死ぬぞ?」
つまり逃げ場が菖蒲には残されていないのだ。
首筋を生暖かい舌が伝うと、嫌なのに甘い声が漏れた。
「感度がいいな」
次に衣を広げると、美しい肌が露出した。


次回予告 第二章 契 約

菖蒲を抱こうとするオルガディート。追っ手が迫る中で、彼は奇跡を目撃する。

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