加納アキラは42歳になる、立派な親父だ。
仕事はアパレル会社で宣伝部長を勤めている。
いわゆるイケメンと言われる部類に入っていたが、
歳を重ねるごとにそんな陳腐な表現は、されなくなった。
むしろ色男、しかも独身、金だってある。
若い女性社員はこぞって加納にアピールする。
五年もいると加納は
無理
なんだと気付く。
しかし誤った気付きではある。
中川マヒルは今年35歳になる秘書課の秘書だだ。
アパレルとは思えないきちっとした仕事をする女性で、
いわゆる「できる女」
というやつだ。
加納と中川は
できている
というのがもっぱらの噂だ。
事実、二人はよく食事にいく。
仲も良い。
でも性的な対象とは思ったことはお互いない。
というより
性的な対象とは思えない
というのが事実だ。
あの街で、最初に気付いたのは加納の方だった。
すらっとした背の高い中川の隣にはグラマラス過ぎるくらいの20代半ばの女。路地に入っていった。
そういうことかと加納は思った。
中川は加納と似ていて
モテる。
でも興味を示さずに30台。
誰かと不倫してるんだと言われていた。
しかし違った。
レズビアンだったのだ。
かという加納もその街にいるのだから
実はゲイである。
瞬間的に、加納は頭のいい男だから、
「そうだ、中川と噂になろう。」と思ったのだ。
早速、次の日、加納は行動を起こす。
秘書課に行き、中川と仕事の話をして、世間話をして、こう切り出した。