黒い友達

hiro  2009-05-29投稿
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僕には1人だけすごく仲良しの友達がいる。
逆を言えば、その1人以外は、誰も友達がいない。
その僕の唯一の友達とは、とても小さな頃から仲が良かった。
僕はその友達を「黒ちゃん」と呼んだ。
黒ちゃんは僕と同じで、僕以外に誰も友達がいないらしい。
その証拠に黒ちゃんは僕としかしゃべらなかった。
だから僕らは、小学校へ行くときも、放課後に遊ぶときも、いつも一緒だった。
「公園で遊ばない?」
僕がこう言うと、いつも必ず同じ答えが返ってくる。
「もちろんだよ。ボクと君は友達だろ?」
黒ちゃんに顔が無くたって、笑っていることぐらいは僕にも分かった。

いつも一緒にいるだけに、1人になりたい時もあった。
「黒ちゃんなんてどっか行っちゃえ!僕から離れろ!」
僕の言葉に、黒ちゃんは黙りこくった。
それでも黒ちゃんは僕について来た。走って逃げようとしても、走ってついて来る。
「もう、何でついて来るんだよ!?」
「だって、ボクと君は友達だろ?」
その黒ちゃんの言葉で、いつも僕は思い知る。
黒ちゃんが、僕の大切な友達だってことを…。

ある日突然、黒ちゃんがポツリと言った。
オレンジの光が注ぐ、夕暮れの公園でのことだった。
「君とはもうしゃべれなくなっちゃうんだ…」
僕は驚いた。
「な、何で!?どういうこと!?」
「君みたいな子なら、きっとたくさん友達ができるよ」
「僕には黒ちゃんしか…」
僕の言葉を遮って黒ちゃんは言った。
「いつまでもこのままじゃダメだと、ボクは思う」
「え…」
「君としゃべられなくたって、ボクは君をずっとそばで見守るよ」
「う、うん…」
「これは、男と男の約束だ!」
そして僕は地面に手のひらを置いて、黒ちゃんと手をあわせた。
それから黒ちゃんは二度としゃべらなくなり、ただの影になった。
黒ちゃん、僕、なんだか頑張れる気がするよ。
友達何人できるかな?

僕は公園をあとにした。
僕の影が、約束を守るためなのか、ちゃんと僕について来た。

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