放課後になり、リョウはユカリが指定した、えんばん公園に行った。
先にユカリは、一人でブランコに揺られていた。
「用ってなんだ?」歩みより、おずおずと尋ねた。
「あの、サトウ君のことなんだけど」
サトウ?サトウ、、あっ、いつも教室の隅で、ぼんやりしている奴だ。そいつがどうかしたのか。
「それで?」
「それがタツヤ君達にいじめられてるのよ」
「それで俺に助けろとでも」一瞬、無理だと思った。クラス1、いや、学年1の不良グループのリーダーだ。
「知らなかったな」本当だった。「で、なんでまた俺なんだ?」
「リョウ君、中学まで空手やってたでしょ」
「それとこれとは第一、空手は喧嘩をするためのものじゃない」
「だから、喧嘩じゃなくて助けてあげてよ。男でしょ」
リョウはドキリとした。
「ね、お願い」
「お願いね」とはぐらかした。
そこでユカリが言った。 「リョウ君て、優しい人だと、ずっと思ってたのに」
その言葉にリョウはユカリが自分をずっと見ていたんだなと思った。