ほんの小さな私事(4)

稲村コウ  2009-05-30投稿
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「今日から皆と一緒に机を並べ、学ぶ事になった、牧野沙羅君だ。彼女は、事情あって、東京から転入してきた。五月からの転入という事で、皆とはほぼ、同じスタートラインだが、まだ解らない事も多いだろう。故、それぞれとも、彼女に色々と教えてあげてくれ。」
女性ながら、まるで、男性のような喋り口調の先生が、早口で私を紹介してくれた。
続けて私が、その先生…瀧口先生の促しを受けて自己紹介した。
「牧野沙羅です。まだ解らない事は多いので、色々と教えてください。よろしくお願いします。」
そう簡単に言い、一礼すると、クラスの皆がざわつき始めた。
「東京からだってよ。見た感じお嬢様っぺぇし、なんかあってこっち来たのかね?」
「なんちゃら財閥の一人娘?なんちて。」
「なにバカな事言ってんのよ。相変わらずアンタ達は下らない事を思い付くわね。」
様々なヒソヒソ話が飛び交う中、そのざわつきを止めたのは、バシィン!という音だった。
瀧口先生が、竹刀で教壇を叩いたのだ。
「私語は慎め!何か彼女に聞きたい事があったら、朝礼後の休み時間にするように。」
この一喝で、クラスは一緒にして静まりかえった。どうやらこの先生は、顔に似合わず体育会系のようだ。
「それでは牧野君、キミが座る席は…あそこだ。高野。横になる手前だしな。色々教えてやってくれ。」
「はい。」
その後私は、先生に言われた席に着いた。
「高野愛美よ。これからよろしくね。」
隣の席になった彼女は、先ほど、男子に突っ込みをいれていた子だ。彼女は、満面の笑みを見せて挨拶してくれた。
「こちらこそ、これからよろしくお願いしますね。」
高野愛美さん。これからずっと仲良くやっていく友達で、これが最初の出会いだった。



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