信子は出世したとは言っても、実力ではない。
こまが空いたからだ。
できる上司が定年した。
こまが空いた。
若い男性社員が上司になった。
しかし潰した。
「私が悪いんですか?」
仕事ができないわけでもない信子は取締役たちに、毎日のように若い上司のミスを伝え続けた。
ついに部長に信子が選ばれた。
信子は有頂天だった。
ついに自分の実力が認められたと思ったからだ。
実際はこうだ。
「あの、ばあさんは安い。後三年で必ずやめる。
あの、ばあさんを今更動かす部署なんてないだろう。
かと言って、新人をまた入れたら、いびられて、折角の新人をダメにしてしまう。
ここはどうだ?
あのばあさんに部長をやらせてみよう。
もしなんとなく三年が過ぎたら、おめでとうとでも言って、
おくりだせばいい。
何か重大なミスをしたら首を切ればいい。」
信子は威厳を保つことに勢力的だ。
新人は毎日注意する。
褒めることはない。
私は悪くないのだから。
部下には気にいられていると思う。
私を認めている部下は認める価値がある。
そうでない部下は飛ばした。
私は悪くないのだから。
生活、仕事、すべてにおいて、パーフェクトだと信子は思うのだ。
だが、ふと何もない空間に閉じ込められたような息苦しさを覚える。
でもたぶん疲れているのだと受け流す。
私は悪くないのだから。
私は悪くないのだから。