真実 2

彰子  2009-06-01投稿
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3度目の転勤が決まって、美佐は実家に住むと言い出した。この実家も数年前に美佐の親が定年で住む家がないと言い、中古の一軒家を無理やり買わされたのだ。
 かなり無理をすれば通えない訳ではないが、長男である自分を嫁の実家に引き込もうとする態度に納得はいかず、ましてや自分の母親が入院しても、顔も出さなかった過去の出来事にも腹立たしさをも感じていた。淳は結局、会社の近くで部屋を借り、一人で住む事にした。言わば別居だった。離婚を口にすれば、美佐は周りを巻き込み、自分は懸命に妻をやっているのに、貴方は悪いとやってくるに違いない。かなり面倒な事になるのを避け、単身赴任を装った方がマシだろうと考えていた。どうせ金、金…何もかもに蓋をしていた方が楽だろうと…。
 そんな気持ちは仕事にも繁栄し、今回の任務でもくさっていた。スーツも安いセールのを美佐が買ってきたのをただ何となく着て、周りから「もっとマシなスーツ買って貰えよ」なんて言われながら、淳は美佐に要求する気持ちも無かった。どうせもっと稼げと言われるだけだ。世間的には自分と同じ世代より沢山貰ってるはずだった。が、常に金がない、足りないからもっと仕事しろと言う事しかでない。淳は一人暮らしの部屋のクローゼットを眺めながらため息をついた。
 自分は何の為に稼いでいるのか…、嫁の似合わないブランドを買わす為なのか…

 新しい任務に就いて、1ヶ月が経った頃、淳は担当している研修の中にいる一人の女性に恋をしている事に気付いた。母子家庭で子供を育てているらしいが、全く苦労を出さない懸命な姿は、淳の心に突き刺さった。彼女は話題豊富で真っ直ぐな人だった、周りからも指示され、頼られている亜子は会社の同僚の悩みもよく聞いて適格にアドバイスしていた。男の様なさっぱりした性格だったが、かと言って色気がない訳ではなく、逆に素敵に見えた。女を出さなくても、女性とはこんなに色気があるものかと、改めて思わされる。同性にも異性にも同じ対応しかしない。亜子は人を惹き付ける何かを持っていた。そんな亜子に、実年齢より10歳も上に見られて、ハッとした。淳は自分の生き方が急に恥ずかしく思えた。

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