それから美優は、意図的に近付くと、なるべく笑顔で挨拶をかわすように した。
拓人も挨拶には応えてくれるようになり、ちょっとした話題もかわすようになった。
「あ、坂田、数学の宿題やってきた?」
「うん、やってきたよ」
美優は笑顔で応えた。
「ちょっとノート見せて」
「うん、いいよ」
たわいもない交流だったが美優には嬉しかった。
ある日、廊下ですれ違うと拓人に呼び止められた。
「坂田…」
「え、何?」
いつものごとく天使のスマイルは忘れない。
「坂田って髪の毛綺麗だな」
「……!」
美優は突然の褒め言葉に目を丸くした。
と同時に嬉しいのと照れてしまっているのが混ざり合い、胸の奥がキュンとしたのを感じた。
拓人はクスッとした表情を浮かべ、行ってしまった。
美優はかなり舞い上がっていた。
しばらく頬が上気してるのを自分ても感じていた。
(今のって、どう受け止めたらいいんだろう…。あたしに気がある?それとも単なるお世辞?…)
美優は頭の中が少しパニックになっていた。