電光掲示板の時計が20時を報せて夕闇に帰宅催告をしている
帰りたい……
私もあの頃に
帰りたい
小さなアパート
まだあるんだろうか
フフッ
こんなもつれる足が辿り着けるはずもなく
もやがかかった頭の中にそんな昔の記憶を整理する力など有り得なかった
笑うしなかい。
一人クススと噴き出すように笑ったその細めた目先に街路樹脇の小さな白いベンチを見つけるとよろよろとつかまるように腰掛けた
背中を丸め深い息をついてからそのぶん深く息を吸い込んで勢いをつけて空を見上げた
緑色の若々しい力強い葉の向こうで都会のネオンにうつむくように月が潜んでる私の影を造る月の明るさ…私の影は私を支配し始めている
これから私の影は私を飲み込むばかりだ
だから私は自分を殺し
私の中の影を殺す
そうするしかないのだ