『ちくしょう錆びてやがる。』
切れ味も悪く，殺傷能力は低そうだ。
爆弾を埋められている俺の方が不利だろう。
仕方がないので，部屋の家具で錆びを研いでいた。
しかし予想外の事態が起こった。
殺人鬼が部屋に戻ってきたのだ。
俺は急いで下駄箱に隠れた。
そして，とうとう聞いたのだ。女の声を。
「・・・居る・・・。」
勝った！！これで俺は殺されない！！こいつを警察に突き出してやる！！！
そう思った瞬間，目の前が真っ白になった。
鮮血が飛ぶ。彼女の頸動脈が破裂したのだ。
俺と同じ首に爆弾・・？。
恐ろしい思いが頭をよぎった。
『あっああ・・あんたまさか・・・殺人鬼じゃないのか？！？』
そう。俺達ははめられたんだ。
何者かの手によって。
知らないその女の手を強く握った。
こんな・・・こんなバカな事があるのか？！？！涙がとまらない。
『今助けを呼びます！頑張って下さい！』
懸命に彼女を励ました。真相を伝えてやりたかった。
聞こえたのか聞こえなかったのか・・・それが彼女の最後の光景だった。
彼女は果物ナイフを握っていた。
俺はそのナイフを手に取り，首の爆弾に押し付けた。
あの世に行ったら，君にもう一度会おう。
次は殺人鬼と被害者，等という立場じゃなく・・・・。
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