あれから二週間が過ぎた。くうは来ない。僕があんなことを聞いたからだ。
どうして聞いたんだ。なんであんな事を言ったのかな。
くうが居てくれたらよかったのに。
くうが何かなんてどうでもいいじゃないか。くうと一緒にいると心が安らいだじゃないか。
くうは…
また、絵本を買った。タイトルは『おかあさん』。
なっちゃんのおかあさんは、おべんとうやさんではたらいています。まいにち、おさかなをやいたり、ごはんをついだり、コロッケ(ころっけ)をあげたりします。
けんきなこえで、
「いらっしゃいませ」といいます。
まえに、なっちゃんがおみせにあそびにいったときも、いらっしゃいませ、といってくれました。なっちゃんは、なんだかはずかしくなって、すぐにかえってしまいました。
おかあさんがおうちにかえってくると、いいにおいがします。
だからなっちゃんは、おかあさんがだいすきです。
きょう、なっちゃんのおかあさんは、「ざんぎょう」。 なっちゃんは、ひとりでおべんとうやさんごっこをして、おかあさんをまっています。
いらっしゃいませ。なんにしますか。
窓を開けて、レモン味のマシュマロを深皿に盛ってベランダに置いた。
餌か。
こんなことしてくうが帰ってくるのかな。 僕はよく晴れた空をぼーっと見上げてじゅうたんに座り込んでいた。