淳は亜子と話すようになり、血が通う会話を久しぶりにしたと実感した。
ただ単に酒を飲みながら、のんびり話をしているだけだが、とにかく落ち着く。 淳は亜子と結婚生活を送っているかの様な安堵感を抱きながら、彼女と人生を歩んでいたら…と考える様になった。
「ね、学生時代にお互い逢ってたら、僕達結婚してたかな…?」
と、淳は亜子に聞いてみた。
「どうだろうね、でも結婚してなかったと思うよ…だって、私昔、実家の跡継ぎだったから、転勤する人と付き合ったかどうか判らないな…」
と亜子は自分が昔、実家の事業していた話をしだし、今では想像もつかない舞台の仕事もしていた事をさらっと話出した。
「えっ?じゃあかなりのお嬢さんだったの?」
亜子は意外だろうと笑った。祖母が入院し、心配かけたくなかった彼女は実家に内緒で離婚をし、祖母が亡くなった後、子供に普通の生活を送らす為に財産を拒否して必死に働いてると言う。普通に育ってきた淳は感動したが、理解出来なかった。