おかあさん、お母さん。言いたいことがいっぱいあるの。言ってほしいことがいっぱいあるの。私、卵焼き上手くなったよ。朝もちゃんと起きれるようになったよ。箸の持ち方も覚えたよ。泣かなくなったよ。
 私がひとりにならないように、いつも傍に居てくれたのに。笑って抱きしめてくれたのに。私が見たい笑顔は、聞きたい声は、何処にも無い。それが信じられなくて、夢を見てるんだと思った。
 お願いだから、早く夢から覚めて。そしたら、お母さんにおはようって言うんだ。
 ゆっくり、目を閉じた。
 「――…、」
 窓から差す光が部屋を明るくして、眩しさに目を細めた。そんな、いつもの朝の風景。だけど、
 「…お母さん?」
 みえない、何処にも見えない。夢から覚めた筈なのに、お母さんが居る筈なのに…。あれは悪い夢だったんでしょ?それなのに、私はひとり。
 そこでふと、思った。
 きっとお母さんは、何処かで私を捜してる、不安に思ってる。お母さんが私を見つけられないなら、私がお母さんを見つけなきゃ。
 待ってて、お母さん。