家に帰り着くと圭吾は倒れるように座り込んだ。
母親が心配そうに駆け寄る。
「大丈夫だよ。久々に出掛けたんで少し疲れただけだよ」
壁につかまりながら二階にあがる。ベットに横になりながら圭吾は自分の身体を呪った。
安静にしているしかない役立たずのこの身体。少し無理すればこの様だ。
脳裏に華の健康的な笑顔が浮かぶ。
せめてもう少し丈夫なら華さんと恋をして結婚も子供も夢ではないのに。こんな身体の夫、苦労させるだけだ。
恋を夢見る事も叶わないこの身体。いったい何の為に生まれて来たのだろう。
華の事を思い出すと圭吾の心中は複雑に入り乱れた。
翌日、華は太一を連れて街に買い物に出掛けた。華は出来れば一人で出掛けたかったのだが紅がそれを許さず自分がついていくと言っていたのだが連二郎の仕事先との接待が入り太一が頼まれたのだ。
「圭吾なら気の利いた店を知っているかも知れないが俺はそういうの疎いから…」
華は笑った。
「いいのよ。自分で探したほうが楽しいし。太一さんとだと気を使わなくていいから」
そう言ってから失礼な事かしらと思い華は言い直す。
「いや、あの気を使わなくてと言うのは身内みたいという意味よ。何でも話せるというか…失礼だったわよね?ごめんなさい」
華の態度に太一が笑う。
「別に気にしないさ。俺も華さんの見かけに寄らずさばさばした男らしい性格はいいと思うし。て、言うか圭吾には一応気を使うんだ?」
意地悪く笑う太一に華は少し頬を赤らめる。
「ええ、一応ね」
「確かにあいつは男前で昔っから持ててた割に俺とばかりつるんでてさ。おかげで女の子にやきもち妬かれたりしたんだぜ俺」
「そうなの?大変だったわね」
華は太一の話しに笑った。
そんな、華と太一の様子を馬車の中から病院へ向かう圭吾が目撃する。
華さん。私といたときはあんなにはしゃいだ姿を見せなかったのに…。
圭吾の中に太一に対する嫉妬が芽生える。
あいつは健康だ。しかも華さんの家と家族ぐるみの付き合いだ。華さんも太一には心を許してる。いつかあの二人…。
その先の事を考えると圭吾の胸は痛んだ。
僕には未来があるのか?検査結果を聞きに行く道圭吾の不安は増していった。