美優は恐る恐る近付いて行った。
「拓人君…」
美優が斜め後ろから声をかけた。
拓人が振り返ると美優と目が合った。
「こんなところにいたんだ。昼間からいたの?」
拓人は美優を見るなり、ハッとした表情になったが、すぐさま開き直った口調で言った。
「んな訳ないだろー!朝、腹痛くなって近くの公園のベンチでずっと休んでて、さっきここに来たんだよ!」
「え、じゃあ、さっきまで公園にいたの?」
拓人は、またゲームを再開しながら美優を見ずに応えた。
「…別にずっといたわけじゃないよ」
ちょっと小声でばつがわるそうに言った。
「具合が悪かったら家に帰って休んでればいいのに…」
「……」
拓人は美優の問いには応えず、無言で黙ってゲームをしていた。
「…今は大丈夫なの?」
美優も戸惑ったが、間が持たず次の質問を投げかけていた。
その時、ゲームの手を止め、美優の方を振り返り、強い口調で言った。
「おまえ、おせっかいなんだよ。帰れよ!」
その一言を言い終えるとまたゲームを再開し始めた。
美優はその言葉にとてつもないショックを受けていた。
少し茫然としていたが、逃げるようにゲーセンを後にした…。