ガシャッ!という音と凄まじい衝撃が俺を襲った。
バイクごと空を飛んだ瞬間、七色の虹が目に映っていたのが最後の記憶だ。
「あ、良かった〜っ。生きてたのね?……」
「まぁな。
ここ、…どこなんだ?」
「私の家。 ゴメンなさい、車ぶつけちゃって……」
頭を下げて謝る娘は、長いまつ毛を伏せて涙を浮かべていた。
はっきり言って俺は女の涙に弱い、……というより美女に弱い。
今回もさしたる怪我が無かったため、彼女の残り香漂うベッドで少し寝かせて貰っただけで、俺は立ち去ろうとした。
「今回も」と言ったのには理由がある。
俺は、雨上がりで綺麗な虹の出た日は、必ずアクシデントに見舞われる、という皮肉なジンクスを持っているのだ。
前回は初心者マークのミニバンに追突され、その前は美人トラッカーにバックでぶつけられ……
いずれの場合も相手が飛びっきりの美女とくる。
「ダメ! そのまま帰られたら私の気が済まないわ」
「そうか?…」
やはり今度も、女の家にしばらく居候する羽目になった。
…ミニバンのお姉ちゃんの家を出たばっかりなのに。
そんなわけで、俺は一年くらい自宅に帰ってない。
虹は、新たな誘惑をもた らした。