ほんの小さな私事(14)

稲村コウ  2009-06-10投稿
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林さんは、山下さんと私を、事務所の中に招き入れてくれた。
山下さんを、林さんが用意してくれた椅子に座らせて、私たちは、彼女が落ち着くのを待つことにした。
山下さんは、したにうつむいていて、スカートをギュッと握りしめていた。
私はそれを見ていた時、ふと、彼女のスカートの裾が切れているのに気がついた。その切れ方は、カッターなどて切られたが如く、鋭く切り裂かれており、約十センチほど切れている感じであった。
まもなくして、高野さんが、ヤカンとコップを持って戻ってきた。高野さんが、コップに水を注ぎ、山下さんに差し出すと、彼女は、軽く会釈をしてそれを受け取り、ゆっくりと水を喉に通した。
「どう?落ち着いた?」
林さんの問いかけに山下さんは、無言のまま、コクりとうなずいた。
まだ、目が宙を泳いでいる感じはあったが、先ほどから比べると、大分落ち着いたようだ。
私たちは、どうしものかと、それぞれの顔を見渡しあっていたが、少しした所で、山下さんが、口を開いた。
「渡り廊下の所で…よくわからなかったんだけど…いきなり、足下が…変な感じがして…。で…何かと思って見てみたら…スカートが切れてて…。」
そう言われて気づいた林さん達が、彼女スカートの裾が切れているのを見て、目を点にした。
私は、先ほど、それに気づいていた為、冷静に見ていたが、それでもやはり、このスカートの切れている様子は不自然に感じていた。



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