夜に咲く華〜華の編10〜

岬 登夜  2009-06-10投稿
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連絡をもらい太一が酒場に足を踏み入れた時には圭吾はすでに泥酔状態でカウンターに俯していた。

「圭吾、どうしたんだ?飲めない酒など飲んで」

圭吾は薄目を開けて太一をみた。

「太一か。今日、検査の結果が出てね。永くはないと言われたよ。悔いの残らぬ様にとさ」

しどろもどろながら太一にそう伝えるとグラスの酒をあおる。

「もうよせ。身体を壊してしまう」

太一の言葉に圭吾は大声で笑った。

「壊れる?もう壊れているんだ。何を今更。このままいっそ死んだって…」

太一はとりあえず泥酔した圭吾を連れ店を出た。

圭吾を自宅に運ぶと母親が青ざめた顔で奥から現れた。

「圭吾!!」

少し取り乱している母親に太一は酔っているだけだからと言葉をかける。

「あぁ、ありがとう太一さん。昨日も圭吾と出掛けてくれたの?この子楽しかった様で…」

太一は昨日一緒だったのは自分では無くこの間連れて来た華だと説明した。

「この子が女性の方と?」

圭吾をおぶり二階にあがる太一の後ろをついていきながら母親は少し複雑な顔をし太一に聞いた。

「圭吾はその…、華さんの事どう思っているのかしら?」

圭吾をベットに寝かせながら太一は答えた。

「さぁ?そういう話しはしてないんで」

圭吾を寝かせて太一は帰っていった。母親は深々と頭を下げ礼を言った。

水差しを用意し圭吾の部屋にきた母親は机の上の走り書きを見つける。丸めて投げるつもりだったらしいそれを母親は読んで涙を流した。

そこには明日をも知れぬ我が身を嘆き、友を羨み、そして芽生えた恋の終わりが書いてあった。

母親は走り書きを元に戻し静かに部屋を出た。

「なんとかならないものかしら…」

先の短い息子の為に母親は動こうとしていた。


太一は家へと向かう道すがら圭吾があまり永くないことにショックを受けていた。頬を伝う涙がボタボタと地面に落ちる。圭吾の為に出来ることはないか何が出来るのか太一は自問自答した。が、答えは出てこないまま朝を迎えた。


朝、顔を洗っていると玄関から聞き覚えのある声がした。

圭吾の母親だった。

「あぁ、太一さんおはよう。朝早くからごめんなさい。実はお話しがあって」

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