半年が過ぎ３月になって淳に転勤の辞令が出た。淳の家では美佐が車で通えない事もない。と言い出していた。
淳は単身赴任を装う生活を止める気はなかった。どうにかして、離婚したい。 この半年間も離婚の話をしていたが、美佐に相手にもされず、全く進んでいないどころか、新築の家を購入した事で全てが美佐の都合よくまわされていた。
｢転勤を前にして、この家から通う気はないんだ。俺は離婚したい。ちゃんと話がつくまで、別居代わりに部屋をまた借りるから。｣と美佐に告げた。
美佐は｢誰か付き合っている女がいるんじゃないの?｣と、冷ややかな視線で見ている。その確信は当たり前だった。美佐は淳が時折帰って来て淳が風呂に入ってる時間、淳の部屋で携帯をチェックしていた。
｢いるよ、最初に離婚の話をする前から好きになって、お前と精算しようと思ったよ。勿論、そんな人がいなくても別れたかったが、はっきり自分の気持ちに気付いたんだ。｣
｢どんな女なの?どうせ、若くて、付き合い方も夢の様な付き合い方でしょ。結婚生活の現実の中で飽き飽きして夢物語に酔っているだけよ。｣
と、淳の気持ちにも沿う事も一度もなく、何故そこまで自分自身の自信に満ち溢れてるのか、理解出来なかった。
｢そんなんじゃないよ、彼女は３人の子持ちで君より歳も上だよ。｣
｢…。｣
美佐は言葉を失った。淳の真剣さがようやく理解出来たのか…?実際そうではなかった。それを認めてしまえば、３高の結婚をした彼女の意味が無くなるからだ。
｢結婚して１０年もいたら嫌な事が目につく方が多くなるじゃない。そんな事と比較されれば、私の方が不利よ。｣と美佐は淳の思いにかけ離れたところを詰った。
｢そうじゃないよ。いつも言ってるけど、何故そんな事しか言えないんだよ、もう、やめてくれないか。｣淳は美佐を心から突き放した。
美佐は最後の手段として、自分が女に電話をして、問い詰めれば、相手が淳から手を引くだろうと思った。
淳の携帯を取り、帰って来てるはずの時間に発信した履歴の名前に電話をかけた。淳はその間も携帯を奪いとろうとしたが、首をひっかかれて、うずくまっている間に亜子へつながってしまった。
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