子供のセカイ。23

アンヌ  2009-06-11投稿
閲覧数[406] 良い投票[0] 悪い投票[0]

美香は足を使い慣れない王子を気遣いながら、煙の見える方角に向かって歩き出した。
美香はふと気になっていたことを尋ねた。
「領域のことについて聞きたいんだけど、」
「うん?」
「あの山にはあなたと同じように山姥(やまんば)のおばあさんも暮らしてたわよね?一人の想像につき一つの領域、というわけじゃないのね。」
「そうだね。山姥さんも僕と同じような風景の場所とセットで想像されたから、どっちの要素も含んで一つの領域に統一されたんだと思うよ。」
「“子供のセカイ”にはいくつくらいの領域があるの?」
「さあねぇ。領域は常に増え続けているから。光の子供が想像をやめない限り、“子供のセカイ”は広がり続けるんだろうねぇ。」
「ふうん。あ、あと一つだけいい?」
「いくつでもどうぞ。」
「ここに日にちはないの?私、山姥のおばあさんに三日で“生け贄の祭壇”に着くと言われたんだけど……。」
「領域の数のことだね、たぶん。それぞれの領域ごとに時間の経ちかたは違うから。」
「そうなの……。」
美香は質問攻めをやめてじっと考え込んだ。じゃあ美香たちはやはり王子の言うようにあと二つの領域を越えねばならないのだ。“生け贄の祭壇”はその先にある。
本当はもっといろいろなこと――舞子のことなどを聞いてみたくてたまらなかったが、今はやめておいた。すべては耕太を“闇の小道”から救い出した後の話だ。舞子には例え悪党でも覇王という力強い味方がいるが、耕太は今独りぼっちなのだ。それに、早くしなければきっと耕太は――。考えるだけで体が震える思いがして、美香はぎゅっと唇を引き結んでそれに耐えた。
「王子!」
「はい?」
「この領域を抜けるのに一番手っ取り早い方法は?」
「この領域に住む存在に話を聞くことだねえ。」
「じゃあさっさと行きましょう!」
急に焦り出した美香に、王子は疑問の眼差しを向けたが、特に何も言わなかった。
こぼれんばかりの緑の野原を踏み分けてゆくと、細い木が立ち並ぶ林に出くわした。木肌は綺麗な白で、背が高く、青空を背景に丸い緑の葉が揺れている。美香がそれに見惚れたのは一瞬で、すぐに林の中へ入った。歩き慣れない王子は林の始まる所の最初の木にぶつかり、よろよろしながら美香の後に続いた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 アンヌ 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]
アプリDLで稼ぐ!
“Point Income”


▲ページトップ