その頃、華は連二郎に圭吾との事を聴かれていた。
「どんな関係かって、太一さんの友人で日本に着いたとき知り合って昨日出掛けただけよ。すごく素敵な人で優しいのよ」
まな娘の口から他の男の褒め言葉を聞いた連二郎はおもしろくない顔をした。
「とにかく、結婚なんてまだ早い。その男とも会うな」
華にそう言い、仕事に行くための仕度を始めた。
「お父様、横暴よ」
そうは言ってはみたが先程の圭吾の母親の異様な態度を思い出し華はぞっとした。
「あの子にはもう…?」
圭吾の母親のセリフを頭で考えたがその後に言葉が続かなかった。
それからすぐ連二郎が新居を探しだし華と紅は新居に入れる家具や食器選び、引越しの準備で忙しかったせいもあり圭吾の事を思い出すが会えない日々が続いた。
新居は華の屋に近い場所にありモダン建築の洋風な建物で、華も紅も気に入っていた。
一ヶ月後、引越しパーティーが開かれた。華はお気に入りの淡いブルーのドレスを着てパーティーに華を添えていた。
妙夫婦と子供達も呼ばれていた。
「太一さん。最近、ゆっくり話しが出来る機会がなかったわね。今日はゆっくりしていってね」
華が話し掛けると太一ははにかんだ。
「あの、華さん。圭吾の事何だけど…」
久しぶりに聞いた圭吾の名前に華の胸は激しく脈うった。
「圭吾さん、お元気?父の監視が厳しくて中々一人で外出させてもらえないの」
太一は言いづらそうに話す。
「圭吾何だけどあんまりいい状態ではないんだ。本人に生きる気力が無いっていうか、自暴自棄になってしまっていてね。華さんに会ったら少しは気分も変わるのではないかと思うんだけど…」
「そうなの…。家の裏口で待っていてもらえる?」
太一は訳も聞かず頷き裏口で待った。
10分ほどして着物に着替えた華が裏口から出て来た。
「圭吾さんの所に連れていって」
太一は辺りを見渡した。
「いいのかい?叱られない?」
「いいのよ。だいたい父も母も過保護過ぎるわ。それに夕方までに帰ればわからないわよ。父様は飲んでるし母様は妙さんと話しこんでるし。人がたくさんいるから抜けても判りゃしないわ」
早くと華に促され太一は圭吾の家に華を連れていった。