──懐かしい空、懐かしい空気、懐かしい風景、懐かしい建物──…。
僕はターコイズの家の前にいた。佐々木と、佐々木の兄ちゃんと。
のれんのように布が垂れ下がっている。
──この独特の布の使い方はターコイズの家に違いない。
僕は思いきって、布をめくった。
『こんにちは…。ターコイズ、いる?』
龍の言葉(龍神語)で声をかけた。
中を見ると、焼け焦げた痕や、血痕が飛び散っていて、そのわきでターコイズが倒れていた。
「ターコイズ!!!!!!」
僕は駆け寄った。
『ターコイズ!?何があったんだ!?』
ターコイズからの応答はない。
ふと顔をあげると────
……そこにターコイズの父親がいた。
(…しまった!!!!)
僕はさっき、人間の言葉を発してしまった。
おそらく、その声を聞き分けて来たのだろう。少し怖い顔つきをしてこちらを見ている。
『……こんにちは、お久しぶりです、龍牙です。』
僕が名乗ると、
『おぉ!!大きくなったな!龍牙か〜!!』
と、いきなり笑顔で僕によって来た。
『人間の匂いがするが?』
単刀直入に聞かれ、僕は少し困った。
『──不快なことがあっても、最後まで話を聞いてください、オジサン。』
『?…お、おう。』
『僕は今ここに、龍魔神を2人連れてきています。』『!!?』
『──落ち着いてくださいね!?』
『あぁ…。』
『僕と同じ、人間とのハーフです。一人は、次期の長候補です。』
『………。』
『今回来た理由なんですが、少し、お願いがありまして……。』
『俺にか?』
『……いえ、ターコイズに用だったんですが、ターコイズはどうしちゃったんです?』
『……お前さんを連れて帰ってこれなくて、ひどくおちこんでな。修行をして、力ずくで連れ帰る気だったんだよ。こう言ってた。<今、こいつに何をいったところで通じない。次は連れ帰る>ってな。』
僕はびっくりした。
ターコイズを帰した時、僕が人間といるのを納得したような態度だったから。
まさか、<今、こいつに何をいったところで通じない。次は連れ帰る>なんて思ってたなんて……。
ターコイズの父親は思いもよらない言葉を口にした。
『龍魔神を連れてきていいぞ。』