貴博『まったく…、ああいうのは謝った方が身のためだよ?』
望『私は悪くないんですから、謝る必要は無いでしょう?』
俺が見つけなきゃどうなっていたか分かっているのだろうか?
貴博『でもねぇ…』
望『じゃあ野中さんは向こうからぶつかって来た相手に対して謝りますか?』
貴博『謝るよ。俺ヘタレだし、喧嘩弱いし』
望『…私は自分が悪いと思っていないことに対して謝ることは出来ません』
自分の主張は譲らないタイプか。
貴博『ははは、俺にはとうてい真似できないな』
望『…一つ、聞いていいですか?』
貴博『何?』
望『喧嘩弱いんですよね?ならなんで私なんかを助けてくれたんですか?』
貴博『さぁね、なんでだろうね?』
望『あなたは変わった人ですね』
貴博『そうか?』
望『普通、見て見ぬふりをするでしょう?』
されたことがあるんだな…
貴博『俺は普通じゃないからね』
望『………』
俯いてしまった。
望『あ、あの…私、こっちですから…』
俺の顔を見ずにそういうと、彼女は右の曲がり角へ歩いて行った。あのたまに見せる寂しそうな顔が気になる。
貴博『参ったね』
俺もそっちなんだが…
しゃあない、今日は遠回りで帰るか。