亀山は、薄い水色の横シマが入った七分袖の麻シャツに、白いステテコ、麦わら帽子にサンダルを履いて、砂浜をモタつきながら、走ってやって来た。
…そして何故か手には、虫取り網と、ビート板を持っていた。
「ハァハァ…いや大変ご心配お掛けしました!お二人とも出発前から、ずっと寝てらっしゃったものですから…まだ到着のお知らせが、出来てませんでした。ここが目的地の…最新リゾートビーチです…ハァハァ」
亀山は息を切らしながら、腰をかがめて言った。
「でも何で、誰も居ないんだよ?」
マモルが亀山に尋ねる。
「ハイ…なにせ最新なものですから、まだ誰にも知られていないんです」
亀山は軽く呼吸を整えながら、そう答えた。
「ここはお二人がお泊まりになる小屋…いやコテージがある場所ですが、あちらの木の向こうには、メインのビーチがございます。そちらへ今から、ご案内いたします」
亀山はそう言うと、右手に持った虫取り網を目的地の方角へと指差した。マモルとミユキの二人は、黙って亀山の歩く方についていった。
途中、ミユキが聞いた。
「あのぉ…ここって、どこの国なんですか?」
「ミステリーツアーでございます」
亀山はいつもの調子で、微笑みながら答えた。