亀山の後ろについて歩いたマモルとミユキは、緩やかに生い繁る木立の間を抜けると、再び広い砂浜へと出た。
砂浜は先程と同様にガランとした場所であったが、唯一異なる点は、波打ち際のすぐそばに、小さな小屋が3つ並んで建っていることだった。
「アレは…何ですか?」
ミユキが聞いた。
「えぇアレは、ほったて小屋…じゃなくて、日本風に言えば“海の家”みたいなもんです」
亀山はそう答えた。
3人が小屋のすぐ近くまで来ると、それらが何であるか、次第に分かった。
「これは、海の家“みたいなもの”では無くて、海の家そのものでしょう?」
珍しくマモルが丁寧な口調で亀山に聞いた。
「いや、海の家はあくまで日本での呼び名であって、海外では“海の家”とは呼びません」
亀山も負けずに言い切る。
「外国では“海の家”のこと、何て言うんですか?」
ミユキが亀山に尋ねた。
「え〜と、それは…マリン…ハウス…いや、ビーチ…ホームでなくて…」
亀山は返事に窮する。
「ヘィ、らっしゃいらっしゃい、ここは海の家だよ!美味しいラーメン食べてって!」
その時、一番手前の小屋にいる男が、突然3人に呼び掛けた。
そこに立っていたのは、思いもかけぬ男だった。