「…ただいま。どうしたんだ、こんなところで…」
父親は何事かと怪訝そうな表情を浮かべていた。
「この子、学校今日サボったのよ…。学校の先生から連絡がきて…。それからあなたも昨日の夜、ご帰宅しませんでしたよねぇ…また、例の女のとこかしらねぇ…」
父親は一瞬、困った顔をしたが、直ぐさま拓人の問題に焦点を当て、切り抜けようとした。
「拓人、何をやってんだ」
父親は拓人に叱り付けた。
拓人は応えず、苦虫を噛みつぶしたような表情をしていた。
「何処ほっつき歩いてたんだ!」
父親は拓人に詰めよった。
「親父に言われる筋合いはねぇ…」
カッとなった父親は、拓人の胸倉をつかみ、叫んだ。
「なんだとーっ!誰が学費出してやってると思ってるんだ!」
「じゃあ、辞めてやるよ、学校なんて…」
拓人が白けた感じで応えた。
「お前はなにを考えてんだー」
父親が怒鳴り、拓人に殴りかかろうとしたが、拓人が交わし、取っ組み合いのケンカになっていた。継母は冷めた表情で見つめていた。
その間、暴言を吐きつつも、拓人が父親の上に馬乗りの体勢になり、首根っこを押さえ付け叫んだ。
「あんた、何やってんだ。俺のお母さんも、この人も不幸にしてーっ!何やってんだよー!」
拓人の目から涙が溢れていた…。父親は無言だった。
拓人は心の中で叫んでいた。
俺は親父みたいな女の愛し方は絶対しない、絶対、親父みたいにならない…、と。
継母はいつのまにか姿を消し、隣のリビングから泣き声が聞こえていた。