「高野さん、大丈夫?」
私は咄嗟に、床に転んでしまった高野さんのそばに寄り、しゃがみ込んで、彼女の身を案じた。
高野さんは、自身が転ぶ際に、持っていたカメラを庇って倒れ込んだようで、したたかに臀部を床に強打してしまったようだ。
カメラが大事なのは解るものの、打ち所が悪ければ、ケガをしかねない訳で…。幸い、彼女が肩から下げていたカメラバッグがクッションになったお陰か、衝撃も和らいだようである。
それはそれとして、あと、彼女がなぜ転んでしまったのか?それを確認する為に、私は顔を上げてみた。するとそこには、とある人影があった。
そね人影は、頭をかく仕草をみせつつ、「あ…わりーわりー」と言いながら、頭をかく反対側の手で、廊下の電灯ねスイッチをオンにした。
少し間をおいて、廊下の電灯が一斉につく。そして闇に紛れていた人影は、はっきりとその姿を見せた。
「急に振り向くとは思わなかったからさ、こっちも驚いちゃたよ。けど、お前、驚きすぎ。」
人影の正体は、ブレザー姿の男子生徒だった。
彼は、廊下のスイッチを入れたあと、高野さんと私をジーっと見つつ、あくびをしながらそう言った。
襟のバッヂを見ると1−Eと見える。つまり、私たちと同学年と言うことだ。
パッと見は、周囲の男子生徒と同じような感じだけれども、髪はボサボサで、眠そう目をしている。
そして何より、異質な感じを見せているのは、彼が首に掛けている、多数の機材。ストップウォッチだったり、オペラグラスだったり、中には、普段は見慣れないようなものも見受けられた。