「んっと、俺にも何が言いたかったのかよくわかんねぇな。」
「そうですか。」
伊織は少し残念そうな顔をした。
「でも、たぶん、そのまんまの意味だと思う。」
「どういう意味ですか?」
「今お前は柔道も勉強もどっちも大切なんだろ。ならどっちかに絞らなくてもさ、もっと上の中学なら柔道部あるかもしれないし、少しランク下げればあるかもしれないだろ?たぶん父さんも中学受験なんかしたことないからさ、どう言えばいいのかわかんなかったんだと思う。だから何かを捨てるのはまだ早い年、だ。」
「そうですか…。」
少し伊織が黙った。
そして
「ちょっと考えてみます。嘉谷さん、ありがとうございました。」
「いや、俺もうまく言えなくて悪かったな。」
「そんなことないですよ。本当にありがとうございました。それじゃあ。」
「おぅ。じゃあな。」
そう言うと伊織は一礼し、走っていった。