「きむ、ごめんね。怒ってる?」
『そりゃお前、彼女が他の男にちょっかい出されたら俺だっておもしろくないよ。』
きむ、きむがそんな風に感情を表したのはあの時以来だったね。
マイちゃんの話をしたあの時だけ、いつものポーカーフェイスのきむじゃなかった。
それ以来初めて見るきむの嫉妬。
「わかった。ごめんきむ。私、やつぱりカズマとは付き合わない。きむのそばにいてもいいかな?」
なぜ?なぜ私はそんな答えを出したんだろう。
理由はちゃんとある。今きむのそばにいないときむの心がどんどん壊れていく気がしたから…
私と付き合うって言った事が既にきむが壊れかけていた証拠。
私はちゃんとわかってた。きむはマイちゃんの事があってから人の気持ちを試すのが癖になっていた。
絶対揺るがない自分への気持ちを欲しがっていた。
それは恋愛とは呼べない。だって相手には全てを捧げるほど思ってほしいのに、自分ではもう誰も愛そうとしてなかった。
私にはわかっていたから。だからきむには本当の自分を取り戻してほしかった。愛は試すものじゃないよ。きむがそれに気付くまで私がそばにいるよ。
私は、カズマではなくきむを選ぶ事にした。
カズマに返事を告げると、カズマは笑って
『俺、案外しつこいよ(笑)だからさ、もし辛くなったら赤井さんの為に俺の胸は空けておくよ(笑)迷惑だったら言ってね。色々悩ませてごめん』
一度抜け出そうと思った不倫の世界に足をとられ結局抜け出す事ができなかった。