男は喜びに満ち溢れた表情で、薄い紙で出来たそのポイントカードを、高々と掲げていた。
しかもその手は、『ついにここまで辿り着いた』と言わんばかりに、感動で震えていた。
「でも何でこちらのラーメンが、エコなんですか?」ミユキがクールに尋ねる。
男は涙を堪えるような表情で、鼻水をすすりながら答えた。
「へぇ…では、ウチのラーメンをご覧くだせぇ」
そう言って男は、カウンターの下から生麺を取り出すと、それをそのまま器に放り込み、水道水を注ぐと、最後に醤油らしき物をかけて、二人の手元に力強く差し出した。
「完成です」
男は静かな面持ちで言った。
「こ、これは…何の真似です!?」
ミユキはすっかり慌てふためいていた。
かつてミユキにとって史上最高のラーメンを作ってくれた男が、いま目の前で史上最低のラーメンを差し出したからだ。
そんなミユキの失望を気にもせず、男はこう答えた。
「作る過程で火を使わない!これが究極のエコラーメンでありやす」
どうぞ、と男は念を押した。
しかしミユキは『違う違う』といった表情で、首を横に振ると、手を付けること無く、そっと器を男の元に返した。
ミユキとマモルの二人は、二番目の小屋へと移っていった。