徴兵?
「なにを言ってるんです?徴兵制なんて今の日本にあるわけないじゃないですか」
戦前じゃあるまいし。
「貴様なにを・・・・・・?」
なにをはこっちの台詞だよ。
「こいつ、なにかおかしいぞ。少尉、君はどう思う」
さっきの女だ。
近くにいたのか。
女は俺の全身を見て、
「この反応はおかしいと思います」
おかしい?
俺がか?
「服装、体格、ユスター戦のときの反応、民間人であるとは思います。しかし、中尉へのこの態度。この人物は怪しいと考えます」
怪しい?俺から見ればお前らのほうが怪しいわ。
「とりあえず少尉。この者を基地に連れていき、事情聴取をしろ」
「了解」
基地?このへんにそんな物はないはずだ。
「貴様、私に着いて来い」
この人について行って平気なのか?
というか俺は警察に行かないと・・・・・・
「さっさとしろ! ちなみに来ないというなら力づくで連れていくだけだ!」
力づくだと。
俺はその言葉に反応した。
チンピラの習性のようなものだ。
「面白い。やれるもんなら―――」
言い終わる前に、左顎に拳があたる。
速い。
そんなことを考えてる間に、勝手に膝が地面につく。
脳を揺さぶられた。
立ってられない。
俺はその場に座り込む形になった。
「なんだ貴様。口だけか」
心底ガッカリしたような顔。
そして、哀れむような目で俺を見た。
髪を掴まれる。
「少し寝ていろ」
顔を地面に押しつけられ、そこで気を失った。
「う〜ん」
辺りが眩しい。
なんだ?
「起きたか?」
顔に強い光を当てられている。
誰だ?眩しくて顔が見えない。
少なくともさっきの女の声じゃ・・・・・・
「そうだ!さっきの女は!?」
「さっきの女?桂少尉のことか?」
桂。あいつの名前は桂っていうのか?
あの女に仕返ししないと。
「桂少尉にはあとで話をさせてやる。そんなことより、私の質問に答えろ」
さっきから質問、質問って。
「うるせえ!さっさと―――っ!」
頬に痛みがはしる。
それと同時にそこから、血が。
なにがあった?
わけがわからなかった。
ただ、痛みがはしる前に声がする方向から、パンという音が聞こえたのは覚えている。
俺は、あまりにも突然のことに、拳銃で撃たれたことがわからなかったのだ。