「…すみません。荒木さん。助けてもらって。私、夕樹さんの言ってた、奥村さんにひかれていたってこと…何も言えませんでした」
「いえ、きっと奥村さんとゆう人は、魅力のある人だったんですね。会ってみたかったです」
紀子は、勇一の優しさに、深々と頭を下げた。
勇一は、紀子に聞いてみたいことがあった。
「森田さん、奥村さんが、売ろうとしていた曲、俺と由美が聞いた曲は多分同じ曲だと思うけど…作った人を知る手がかりはあります?」
勇一の質問に、ある人の存在を思い出した。
「秀さん…」
「秀さん?」
「ええ、いつも奥村さんが、そう言ってました。上の名前は…」
「その秀さんとゆう人が、この曲に関わっているんですか?」
「そうです。作った人です」
「そうですか…探してみます。その人を」
「探す?今どこで何しているかわからないんですが…」
紀子も、もちろん会ってみたいのだが、明日の飛行機で帰らなければならない
嶋野も、妹が心動かされた曲を作った人に会ってみたかった。
勇一は、そんな2人の気持ちを察していた。
「嶋野さん、本当にご苦労様でした。これで…由美の願いは叶ったし、これからも元気でいてください。由美の分まで…」
そして、紀子の方を見て、「森田さん、夕樹さんが言ってたけど、きっとこうやって、巡り会ったことは、何か見えない力に導かれたんじゃないかな?」
嶋野も紀子も大きく頷いた。
確かにそうかもしれない。
嶋野のやろうとしていたことを、紀子は事前に知っていたわけではない。
考えすぎかもしれないが、見えない誰かの思いが、4人を導いたのだと思えた
「だから、その秀さんて人も、きっと導かれるように会えると思うんだ…」
嶋野もそう思っていた。
「そう…ですよね。きっと会えると思います。荒木さん、明日の飛行機で私達は帰りますけど、荒木さんと夕樹さんが、その人に会うことで、新しい道が開けることを願っています」
「私も…もし会えたら知らせてください。必ず会いに行きますと…」
「はい。そのうち北海道にも遊びに行きます」
3人とも、それぞれの思いを抱えながらも解散した。
そして、勇一の言った通り、秀とゆう男とすぐに会えることになる。
それも、意外な形で…