ほんの小さな私事(23)

稲村コウ  2009-06-19投稿
閲覧数[436] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「さっき、何だか声あげてたけど、どうかしたの?」
少しして、ジャージに着替え、荷物まとめ終わった山下さんが、私たちの教室にやってきて、何事かと聞いてきた。
「実は、高野さんのカバンに入っていた…。」
私がそこまで言いかけた所で高野さんは、それを遮って慌て気味に口を挟んだ。
「あ、いいのいいの、何でもない。うん、何でもないから。大丈夫だから。」
そんな高野さんの様子に、私と山下さんは、お互い顔を見合わせ、キョトンとしてしまった。
「それよりさっさと荷物まとめて帰りましょ。ほら、だんだん暗くなってきちゃってるし、ね。カズちゃんは私と同じ方向よね?沙羅ちゃんはどっち?」
光度計が壊れたことでショックなのは、先ほどの高野さんの表情を見ていれば一目瞭然だ。それに、微かに見える高野さんの体の周りの空気が淀んでいるのが私には見えた。
これも『霊視』に近いもので、人の感情に併せ、その人の周りの空気が動く様子を見る事ができるのだ。
ただし、『霊視』とは違い、色の識別でなく、いわゆる、熱などで発生する空気の歪み…いわゆる陽炎のような感じで認識できる程度なので、詳しい感情は解らない。
それでも今の情報では、高野さんが、ショックや怒りなどの念を頭に巡らせているのに間違いはなかった。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 稲村コウ 」さんの小説

もっと見る

学園物の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ