真ん中の小屋は、焼きそば屋だった。
焼きそばが大好物なマモルは、今度は俺の出番とばかりに前に進み、注文を始めた。
「おーい、そこのオヤッサン!焼きそば二……つ…」
マモルが、焼きそばを焼いていた年配の男と目が合った瞬間、お互いの表情が凍りついた。
焼きそばを焼いている男は、なんとマモルが働いている風呂屋のオヤッサンだった。
「ホントに…オヤ…サン」
マモルは小さくつぶやいた。
――オヤッサンは、怒ってここまで追いかけて来たんだ、きっと。
マモルの頭の中には、どう言い訳しようか、そればかりが浮かんでいた。
しかし、どう考えても、言い訳の言葉が浮かばない。
マモルは意を決し、素直に謝ろうとオヤッサンの方を見つめた。
「すまん!マモル!!」
謝ったのはオヤッサンの方だった。
マモルは一瞬、何が起きたのか分からなかった。
「すまん!マモル!!」
また謝った。
「頭を上げて下さい、オヤッサン。一体、どうしたって言うんですか?」
マモルは心が整理できないまま、そう言った。
「ワシはお前さんを…いや、あの風呂屋を見捨ててしまったんじゃ!欲に目がくらんでしまったんじゃー!」
オヤッサンの目からは、大粒の涙が溢れていた。