「君もおいでよ」

kuniichi  2009-06-20投稿
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「君もおいでよ」
誰よりも聞き慣れたはずのその声は、しかし全く見ず知らずの人間のようにも聞こえ、僕は少しだけ身震いし、その連動のように小刻みに首を横に振った。
これから世界は崩壊してゆく。知ってしまった僕は、それでもただ成り行きに身を任すことしかできないだろう。去ってゆく彼の後ろ姿を眺めながらぼんやりとそんなことを考えていた。
あれからたった5年で世界は凄まじいまでの変貌を遂げた。巨大地震や竜巻を伴うゲリラ豪雨など今思えば可愛いものだった。
異常気象に伴う磁場の乱れが全てを狂わせた。世界中の核が飛散した。
何もかもが崩れゆく中で、僕はあの彼の事を思い出した。
彼が僕に託した一枚の紙切れ。それは、タイムマシンの設計図だった。
廃屋という廃屋全てをめぐり掻き集めたガラクタたち。設計図どおりに組み立てた。
雷雨が近づく。舞台は整った。僕は僕の世界を救うため行かなければならない。だが、この事実を誰かに伝えなければ。
迷いはなかった。初めから決まっていたことだ。タイムマシンの設定は、5年前のあの日。
雷が落ちる。それを動力にタイムマシンは動きだした。

僕の話を聞きおわった彼は驚きで目が点だった。僕もきっとそうだったのだろうと思うとなかなか可笑しかった。あの時ふっと笑った彼の気持ちが分かった。
そして、タイムマシンに乗り込む僕。答えは分かっている。でも言わずにはいられなかった。後ろを振り返り「僕」に問う。
「君もおいでよ」
そして、もう一度僕は笑った。

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