「ワシは、細々やっていた風呂屋を捨てて、ここまで来てしまった…お前さんが休憩中の頃合いを見計らってな。本当に悪いことをしてしまった」
オヤッサンは少し興奮がおさまった様子で、ゆっくりと喋り出した。
――オヤッサンは、俺達が探しに来たと勘違いしている。
マモルはすっかり安心した。
「過ちは誰にでも有るものだよ、オヤッサン。気にすることねぇって」
マモルはオヤッサンの肩を叩きながら、諭した。
――マモルはすっかり強気になっていた。
「オヤッサンが居なくなって、ホント心配したよ。とにかく見つかって良かった。ここに居ると分かるまで、苦労したけどな」
マモルは、口から出任せを言った。
「ところでオヤッサン。俺達が探しに来てて、質問するのもヘンな話だけど、ここは一体どこだい?」
オヤッサンの情けない表情が、一瞬真顔になった。
そして、数秒の沈黙があった後、オヤッサンはこう答えた。
「ミステリーツアーでございます」
マモルの背中に、冷や汗が走った。
「やめろよ!オヤッサンまで」
癇に触るような面持ちで、マモルはそう言い返した。
そんなオヤッサンとマモルのやり取りを見ながら、背後の亀山は、ヨシヨシとうなずいていた。