「何があったのか…言ってくれ。オレが少しでも力になれれば…」
「…死にた…かった」
「えっ?」
龍吾は必死に慰めようとする。
「死にたかったんだ。」
「…そ…そうだったのか。」
「で、ここを通った時、野球の…」
「野球の?」
「バットが…バットが…」
「バットが?」
「バットの思い出が蘇ったんだ。」
涙ながらに過去を話してくれた。
「僕の親は…毎日ケンカしていて…特にお父さんは、暴力をふるうんだ…。僕は、その光景を当たり前のようにして見てきたんだ。そして…5年前の事なんだけど…」
「…うん…」
龍吾は背中をさする。
「お父さんが…バットで…僕を…殴った。」
「マジかよ…」
「しかも数十回…だからバットは…人を殴る…凶器だと思ってた。」
「…そうだったのか…」
「今日…バットの使い方を…正しい使い方を知った。」
「今までは…殴る事が正しい使い方だと?」
「そう…」
「…それで見てたのか…」
「で…でも、龍吾が…話してくれたからさ。死ぬの…やめた。」
「まぁな。もうオレら…友達になったみてぇだな。」
「うん…そうだね。」
二人は夜道を歩きながら「で、今…親は?」
「別居してる。」
「なら…安心…」
「安心じゃない。」
「…何でだよ?」
「2ヶ月後に…お父さんが帰って来るんだ…」
それを聞いた龍吾は、ボールを投げ、
「それ、明日持って来いよ」
「………」
「ぜってー持って来い。それでキャッチボール!」
龍吾なりの優しさだった。
「オレ…そういう話聞くとさ、助けてあげたくなるんだ。」
「…何年なんだ?みーくんは…」
「…中2」
「おっ。同じー。どこ中?」
「東中…。」
「これからもヨロシクな!仲良くしようぜ!」
龍吾は笑顔でそう言った。
僕は、少し戸惑いながらも
「……分かった。よろしく」