龍吾は笑って、
「仲良くしような!」
僕も笑い返して、
「うん。」
大きくうなずいた。
こんなにもうれしい日々が…来るなんて…
こんなにも優しい人が…いるなんて…。
まさか…死のうと思っていた日が、龍吾のおかげで一瞬で、「死」という文字が消えるなんて…。正直…明日のキャッチボールが楽しみです。
というか…待ちきれない。
龍吾は…闇をさまよっていた僕に、そっと手を差しのべてくれた、ヒーローのような存在だった。翌朝、4月10日、8時。
30分前に来て体を温めていた龍吾。
「8時か…。」
まだ岬の姿はない。
「来ないのかなぁ…。」あきらめかけていた龍吾の背中に、急に手が乗った。
「わっ!」
一瞬ビクッとした龍吾を見て、作戦成功だ!と笑った。
「おおーっ!みーくん!」
「へへっ。びっくりした?」
龍吾の心臓はもう暴れまくっていた。
「ボールは?持ってきた?」
「じゃーん!」
「グローブは?」
「じゃーん!」
「ねーのかよ!」
龍吾はすっころびそうになっていた。
「しょーがねぇ…オレの貸してやる。」
「だって…でも」
「OKOK。オレは大丈夫。」
何て優しいのだろう。
準備は整った。
「よし来い!」
慣れないキャッチボール。案の定、放ったボールは、龍吾の右側にずれてしまった。
「そこかよ!」
龍吾は素早く動いて、ボールをスライディングキャッチした。
いよいよ二人の友情をつなぐ、キャッチボールが始まった。