子供のセカイ。28

アンヌ  2009-06-22投稿
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「あ、あの……!」
情けないほど震えた声しか出てこない。美香は懸命に説明しようとしたのだが――自分が何を説明しなければならないのか全くわからないことに気づき、愕然とした。
恐らくはリリィの叔母さんであろうその女性は、何も言わずにつかつかと近寄ってきた。そして美香の前を通りすぎたかと思いきや、暖炉の脇に掛かっていた真鍮のお玉をひっつかむと、いきなり振り返って美香に向かって降り下ろした。
「っ!」
持ち前の反射神経でとっさに火かき棒を横に構えてそれを受けた。すごい力だった。ギリギリと押さえつけられ、美香は歯を食い縛った。
叔母さんはほう、と驚いたように眉を上げた。
「よく受け止めたもんだね、この薄汚い泥棒猫!」
「わ、私は泥棒なんかじゃありません。」
「嘘をお言い。どこで知ったか知らないが、リリィは渡さないよ。あの子は…、あの子の能力は、私のものだ!」
叔母さんはもう一度お玉を振り上げた。その瞬間、きらりと光ったものを見て、美香はとっさに後ろへ飛びすさった。
ガッ!
「……本当に勘がいいね。忌々しい子だ。」
床に突き立った鋭い剣を見て、美香はゾッと身震いした。危うかったということだけではない。なぜお玉が剣に変わったのか、その訳もわからない恐怖からだった。
叔母さんは美香の反応を楽しんでいるようだった。ゆっくりと床から剣を引き抜くと、いやらしく口元を歪めて笑った。
「訳がわからない、って顔をしてるね。どうしてだと思う?リリィのような魔女っ子を閉じ込めてる人間が、ただの人間だとでも思ったのかい。」
「あ、あなたも魔女なの……!?」
「そうさ。魔女も魔女、偉大なる大魔女メガーテとは、私の事だ!」
誇らしげに言い放つと、大魔女メガーテは剣を構えて美香に向かって突進してきた。ダメだ、避けきれない――!美香はぎゅっと目をつむり、なけなしの抵抗に火かき棒を前へ突き出して、棒が頑丈な盾となることを祈った。
祈っただけの、つもりだった。
ギィンッ!
「「!?」」
驚いたのはどちらも同じだった。
さっきまで火かき棒だったものが、美香一人を裕に覆い隠すような大きくて頑丈な盾に変わっていた。折れた剣が宙を飛び、メガーテの頬をかすって後ろの壁に突き刺さった。

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