「君がダイヤなんだよね?」
タクトは、まるっきり容姿が変わってしまったダイヤへ近づいて行った。
「どうして僕らを襲ったんだい?」
『憎かった・・・』
相変わらず、隣でフラットが訳してくれている。「君は人を憎んでいたのかい?」
タクトは静かに問いかけた。
『今までそう思っていた。だけど、あなたたちを襲った後に、ふと思ったの。あたしが憎んでいたのは人ではなく、この町の住人だけだった。そして、振り返ってみたの。あたしが今までしてきたことを、あたしはクレイラの住人を全て殺した。大人も子供も男も女も!』
ダイヤは話して行く内に、徐々に興奮状態に陥っていた。
『殺している時はあんなに楽しかったのに・・・思い出すと、胸が苦しい』
ダイヤの表情からは、哀しみと虚しさが滲み出ていた。
タクトは黙って聞き続けた。
『今でもはっきりと目の前に浮かぶ。必死に命乞いをする老人、ボロボロになっても子供を抱え続ける女性、泣き喚く赤ちゃん・・・そんな人々を躊躇することなく惨殺した』
訳してタクトに伝えているフラットもダイヤに感情移入しているようだ。
『何の罪もない人たちを簡単に殺すなんて・・・あたしは・・・本当に・・・人間なのかな・・・』
ダイヤは醜い自分の姿を鏡に写した。
「・・・君の罪は決して消えないと思う。だけど、自分のやってしまったことが間違いだと気づいたこと、それだけでも、大きな意味があると思うんだ」
タクトは落ち着いた口調でダイヤに話しかけた。
「心が醜いと性格まで醜くなる、性格が醜いと姿まで醜くなるんじゃないかな」
ダイヤの表情はより一層哀しみを含んだ。
「だけど、今は違う。君は自分の間違いに今、やっと気づいたんだ」
『あたしの罪が消えることはない。でも、少しでも罪滅ぼしがしたい』
ダイヤは自らの醜い姿を映す鏡を自らの手で割った。同時に大きな音が部屋中に響いた。
「ああ、ここから始めよう」
そして、突然ダイヤを眩し過ぎる光が包み込んだ。
「なんだ!」
タクトは腕で目を覆った。
光が止んだ。
タクトは腕を降ろしながらそっと目を開けた。
目の前には見知らぬ少女が椅子に座っていた。
「どうなってるの?」
ダイヤの自分の腕や背中を見つめていた。
「君の心は、もう醜くはないということさ」
タクトたち四人は部屋から去って行った。