「あの〜・・・早く行きたいんだけど?」
龍一はぷいとそっぽを向いた。
なぜだかこいつの言うことは聞きたくない、そう思った。
「・・・しょーがないな〜。」
立ち上がる様子のない龍一に、ジョウは・・・
ガシッ!
「え?」
龍一の腹に片腕を回し、軽々と持ち上げ、まるで龍一を子供のように脇に抱えた。
「な・・・!?」
「ブリーフィングルームに、ちょっこ〜。」
そう言うと、ジョウは短距離走の選手ばりのスピードで走りだした。
「うあぁぁぁぁぁ!?」
龍一を脇に抱えているのにもかかわらず、ジョウの走る速度は並ではなかった。それ加え、一歩一歩の幅が広く、龍一はあたかも飛んでいる様な感覚におちいった。
(き、気持ち悪い・・・)
「えーとここを右・・」
カクッ!
ジョウは、スピードを落とさず、曲がり角を90゜で曲がった。
「ぐえっ!」
とたん、腹に衝撃が走る。気分はさらに悪くなった。
「と、とま・・・おろ・・・」
「え?なに?」
吐き気で、声が言葉にならなかった。
そして、二分後・・・。
キッ!
「とーちゃく〜。」
ジョウは『作戦考案室』のプレートのついたドアの前で、ピタリと急停止した。
「あれ?」
脇に抱えた龍一が、ぐったりしている。
「お〜い。」
「怪我・・人・・・は・・・いたわれ・・この・・・やろお・・・!」
途中、四つの曲がり角を抜け、気分がどん底の龍一は、ジョウのことが心底キライになった。