調教と教訓6

うちは。  2006-07-19投稿
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その日は晴れ晴れとした空だった。
空気はとても澄んでいてまさにテスト日和だった。
ただ、一つ不調といえば私の体。

「37度弱……。」

まいったなぁ。
今日はテスト初日だし外せないよなぁ。
朦朧とした頭の中、私は結局学校へと足を運んだのである。

登校中の生徒は誰もが下を向いて歩いている。
それはテストに頻出されるといわれたノートの内容を暗記したり、
私のわからない相手に携帯で連絡を取っていたりしている。
だから私は上を向く。
こんなに空は綺麗だと言うのに。

「───ねぇ、聞いた?小川先生の話!」
「オガちゃんがどうかしたの??」
「なんかねぇ〜…」


あの人今年いっぱいで学校辞めるらしいよ。


前言撤回。
空は全然綺麗ではなかった。

話によると、彼は三年いっぱいの契約でこの学校に来ていたという。
それに体育の教師だけでなく、有名な大学の野球のコーチをしているのだという話だった。
「まぁ所詮体育の教師だしね!」
「え〜、でもうちオガちゃんマジ好きだったのになぁ〜…。」

足元がフラついてきた。
それはきっと、熱のせいだけじゃない。
でも私は、その言葉を一つも信じられなかった。
ちがう。
信じたくなかっただけなんだ。



今日のテスト科目は全部で四つ。
最後の科目が体育で、実技テストの種目はバスケ。
二つのチームに分かれ大きく動けば動くほど評価がプラスになる、というのが先生の説明だった。

試合のホイッスルが鳴った。

私は相変わらず目が回り、しっかり動けなかった。
「佐藤さん!」
「あ、ごめん…。」
「しっかりしてよ、マジで。」
心臓を深く押された気分だった。

頭が痛い。
でも動かなくては。
足がふらつく。
でもボールをとらなくちゃ。

押されて
流されて
飲み込まれる

何かに似ている気がした。
ああ、そうだ。

私の今だ…。


バーン!!!

「佐藤さん?!」
「尚子っ!」
「誰か、保健係ー?!」

それから私は講堂の真ん中で倒れた。

神様。
自分だけが救われたいと思うことはいやらしいのだろうか。
どうして私を見てくれないのかと思うことはズルイのだろうか。
そう思うのに、どうにもできない自分は
ひどく臆病なのだろうか。



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