ほんの小さな私事(30)

稲村コウ  2009-06-27投稿
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しかし、気がかりな事としては、図書館に続くあの渡り廊下の途中、林の方向に見えた赤い靄。
あの靄が見えたあと、あの場所で山下さんは、原因不明な出来事で、スカートの裾を切られてしまった。
身体に傷がつかなかったのは不幸中の幸いだが、あの場所に何か、危険があるのは確かな事だ。
とは言うものの、私はその危険を認知できるものの、それを排除できる訳でないので、危険から遠ざかる事しか手段を選べない訳で…。
そう思うと尚更、自分に何故、このような能力が備わっているのか?この事を唯一知っていた母は、どのよう事を知っていたのか?謎は深まる一方である。
私はそんな事を考えつつ、窓の外を見た。
遠目には、お墓が並んでいるのが見え、その一帯に、白い靄が微かに見える。
いわゆる『残留思念』とか、そういったものだろうか?
母親が言うには、人が死んでも、その思念が現世に残ると言っていた。そして場合によっては、その家族の側に憑いたり、どこかに生がある場合に飛んで行き、その魂と融合する事も有るとか。
今、私の側にも、僅かな白い靄が漂っている。これはもしかしたら、私の母親の思念か?或いは父親のものか?
いずれにしても、私を護るが如くついてくるその存在は、私の守護霊的なものなのだろう。
「どなたの思念か判りませんけれど、私を見守っていてくださいね。」
私は、自分の側で漂っている白い靄に向かってそう言うと、私の言葉に反応したように、僅かに揺らいだ。



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