もう何時間経ったんだろう…
カズマからの連絡はまだ来てない…
やっぱり私はきむに会えないのかな…
帰ろう…会ってはいけないんだ…
私が駅に向かうとやっとカズマから連絡が入った。
『今からすぐ病院に来て。』
私はタクシーに飛び乗りきむのいる病院へ行った。
玄関でカズマが待っていた。
「面会時間もう終わっちゃったよね?」
と言った私に
『大丈夫。仕事の事でどうしてもって言って看護婦さんに頼んで時間外でも会えるように許可を貰ったんだ。ただ奥さんもその許可を貰ってるらしいから、俺外にいるわ。ヤバくなったら携帯鳴らすから!行って!』
「カズマ、ありがとう。」
私はきむのいる病室に急いだ。
3階の一番奥の部屋。
ノックをしても返事がない…
私はそっとドアを開けた。
そこにはあの時よりも痩せてしまったきむが眠っていた。
私はきむに近寄り、起こさないようにきむの頬に触れた。
「きむ、ごめんね。私、きむに会いに来ちゃった。心配で心配でたまらなかったんだよ。本当は私が来るべき場所じゃないけど今日だけは許して。」
眠っているきむに小さな声で語りかけた。
「あの時…電話をくれたのは病気になって弱音吐きたかったからなんだね。私何も気付かなくて…ダメな女だね。絶対病気に負けたりしないでね。私、遠くからずっと祈ってるよ。」
やっぱり私は無力で…
病室に飾られた花瓶の花や綺麗に洗濯されたパジャマに、私にはきむにしてあげられる事が1つもないのを思い知らされる。
奥さんの愛情がちゃんときむに向いているのが伝わった。
この病室にいるのが苦しかった。
私は前にきむがくれた小さな象の置物をそっと病室に置いて部屋を出た。