龍吾は僕の手をさっと掴み、
「行くぞ。」
一目散に走った。
何にも考えずに。
気づいたら、石田中の門の前に来ていた。
「大丈夫か。」
「…少し痛いかも。」
「ごめん!本当にごめん!無理に走らせて。」
龍吾は土下座までした。「大丈夫だから。そんなことしないで。」
すると龍吾は、
「助けてやりたかった。みーくんを…守ってやりたかった。」
龍吾は話を続ける。
「守ってやりた…いや…守りたかった。」
「えっ?」
「最初に会ったときから。」
その時、一台の車がやってきた。
僕の…お母さんだった…「まだ岬。キャッチボールしてたの。」
「その後遊んでたから。」
「その時は電話一本くらい入れなさい。」
「こんばんは。」
龍吾は僕の母親に挨拶した。
「顔…なんでこんな傷だらけなの。」
母は龍吾に挨拶を返すこともなく、僕の顔を心配した。
「……。」
僕は黙っていた。すると、母は龍吾を指さして、「あなたが、飯岡龍吾くんね。」
「あ、はい。」
「昨日知り合った…そう聞いたけど、挙げ句の果てにはこうして暴力をふるうのね。」
「えっ…いや…。」
「言い訳しても無駄。もうこれからは、二度と岬に会わないで下さい。」「え…」
「会わせません。」
そうすると、僕を車の中に引きずり込んだ。
車内はもう家族の温かさ、あの家庭の姿は、いつものように冷たく、無口な家族の姿へと変わった。
後ろを見てみると、うなだれた龍吾が、とぼとぼと帰って行くのが見えた。
母のせいだ…。