「ただの警察じゃないわ。“秘密警察”だからね。この国で“死刑”しか残ってない奴らにとって、自分の過去を消してくれて、正式隊員になれた暁には、SPS最高地位と国でのお釣りがくるほどの安定した生活‥“一石二鳥”ってとこね。政府にとっても、能力の無い犯罪者は死んでいくだけ‥これもまた、“一石二鳥”ってわけね」
「・・・・・」
憂牙はきつめに締められた黒いチョーネクタイを少しゆるめた。
「グレイは犯罪者だったのか?」
「さぁ?私はコンピューターに残された断片的なデータから推測しただけ。実際この目で見た訳でもないし‥ただ、ほとんどの情報は政府のメインコンピューターからだから、まず、間違いないと思うわ」
「‥フッ…政府への直接攻撃とは‥情報機関の奴らが黙っていないんじゃないか?」
「攻撃?この情報時代、政府のメインコンピューターに不正にアクセスしてくるコンピューターウイルスの数、一日どれくらいあると思ってるの!それも、そのほとんどは他国の情報機関によるものなんだから。私はただ、どさくさに紛れて、ちょこっと覗いただけよ…他国のハッカー4人程犠牲になってもらったけどね‥」
「‥‥さすがだな」
そう憂牙は言うと、空になったグラスを一つ、テーブルの上に置き立ち上がった。
「‥あら、もう行くの?」
「ああ。今日はお姫様の顔が見られそうにないんでね」
「当たり前よ!こっちは暗号化したデータの解析で、3日間徹夜で、目の下におっきなクマが出来ているんだから。恥ずかしくて人前に出れやしない!」
「‥何時も悪いな」
「悪いと思うなら、その無愛想な喋り方止めなさいよ!‥まあいいわ。あなたから預かっていた“データ”返すから持っていってちょうだい。テーブルの箱の中にあるわ」
ダイニングテーブルの中央に、綺麗に装飾された木製の小さな箱があった。
箱を開けると、ピンクとオレンジの宝石で装飾された、十字型の鍵が入っていた。その鍵の上部にはゴールドの長めのチェーンが付いていて、ペンダントのような形になっていた。
「‥天の国の鍵」
つづく