「桜木秋穂君です。」
彼が教室に入ってきた時、クラスがざわついた。
その理由は私でもわかった。彼は、アイドルにも負けないイケメンだった。
「桜木秋穂です。よろしくお願いします。」
声までイケメンだ。
「ちょっとー萌衣ー、あの秋穂君イケメンじゃん。」
「えー、そう?イケメンだけどわるそーだよ。」
「えー、なんでー?恋しようよー。」
「だーかーら!明日テストだってばー。」
「じゃぁあたしが秋穂君とっちゃうよ。」
「そんなの、リクが嫉妬す…。」
「?」
「あ…。」
うさぎの後ろに、背の小さい男の子が立っていた。
「リク…。」
「今の本気?」
「んな訳ないじゃん、萌衣を恋に目覚めさせるためだよ。」
「あぁー。」
「あぁー。じゃないよ。いとこなんだから否定くらいしなさいよ。」
うさぎの彼氏は私のいとこなの。
親友の彼氏が自分のいとこ…
ちょっと複雑だけど、けっこう面白い。
「でもあの桜木秋穂って人、確かにイケメンだったな。」
「でしょー!男のあんたの目からもイケメンに見えるなら間違いない。」
「てか背伸ばしてよ。首が痛い。」
「るせー。」
桜木秋穂に初めて会った日はとくになにがあるわけではなく、桜木秋穂の周りに人だかりが出来ていただけだった。