《ガンバレ!!》
彼女にメールを送信した瞬間、僕は強い眠気に襲われた。
気が付くと僕は、小さな村にいた。
右手にはなぜか、ブヨブヨした感触の物体を握っている。
それは野球ボールぐらいの大きさで、見た目はシャボン玉のように半透明だった。
これは何か?と道行く人に訊ねると、
「それは『ユメ』という生き物で、それを持っていると自分の夢が叶うと言われているんです」
と、親切に教えてくれた。
そう言えば僕には夢がある。今右手に握っている半透明なユメのように、何となく不確かな夢だ。
「すみません。この辺でユメを見ませんでした?逃げられてしまって」
突然、見覚えのある女が訊いてきた。ユメって逃げるものなのか…。
「どんな感じの?」
「とにかく大きなユメなんですけど」
「多分、あっちの方に行きました」
僕は当てずっぽうに指差した。この女に、あきらめずユメを追いかけてほしかったからだ。
「ありがとうございます。やっぱりユメは大きい方がいいですよね!」
「どうしてです?」
「大きいと逃げられた時に見つけやすいでしょ。今みたいに」
「まあ…。ところで、あなたの夢は何ですか?」
僕の質問を無視して、女はユメを捜しに走って行ってしまった。
女の遠ざかっていく姿を見ているうちに、僕の意識も遠ざかっていく様だった。
右手にはユメを握ったまま、僕は目を覚ました。
……!
右手には、さっきまでのブヨブヨしたユメではなく、携帯電話が握られていた。
彼女からの返信メールが届いている。
《うん、ガンバルよ!!私のこと応援してね》
このメールで、僕の夢は叶ったことになる。
僕の夢は、彼女がいつまでも夢に向かって頑張ってくれること。
そして今、彼女は大きな夢を追いかけて、頑張っている。