二人の長い夜?

森田  2006-07-19投稿
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自分の声がかすれていると実感する。よく意味が取れなかったらしく、竜一は不思議そうな顔をした。


竜一『え?』

拓也『奴が校舎に入ってきたんだよ』

竜一『奴?』

拓也『昨日の奴だ』

竜一『マジ?』

拓也『間違えるはずないだろう?あいつのヤバい眼がこっちを見ていたんだからな』

グラウンドに視線を落とした直後、落下したような絶望感が体を支配した。眼が合った。
赤く光っていたかどうかなど覚えていないが、眼が合ったことだけは覚えている。


竜一『どうすんだ?』
拓也『逃げる。全力でな』

竜一『できるのか?』
拓也『できる』

そうでなきゃ、今度の死体は俺たちになるだけだ。

どうやって逃げる?

竜一『おい。なんか変な音しないか?』

拓也『変な音?』

そういえば固い杖で床を叩いているような音がする。

竜一『ヒールかスパイクの音か?』

音が聞こえやすいのなら大丈夫だ。

拓也『急ぐぞ』

竜一『あ、ああ』


何者かが校舎に入って来ていることがわかったためか、神妙な様子で頷いている。


早足に階段までたどり着くと、足音が途絶えた。

拓也『…?』

俺たちが下へ降りているのに感づいたのか?んな馬鹿な。

拓也『…』

今は三階。これから二階に降りようとする位置だ。廊下が見える。

拓也『…っ』

眼が合った。なぜ相手の眼が光って見えていたのかわかった。赤く、鋭い眼。まさか、人間じゃない!?

拓也『降りるぞ』


竜一『…!おう!』

全力で階段を駆け下りる。


硬い音はメチャクチャな速さで追って来ている。


竜一『オイオイ…』

廊下へ走り出して数歩。硬く重い音が真後ろから聞こえた。

振り向けば、丸くなっている黒い物体が見える。

腰ぐらいまでの高さしかないそれは、赤い二つの眼をともしている。人間じゃないな、マジで。


拓也『さて、どうする?』



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